添乗員として働くためには必ず取得しなければならない必須の資格があります。
それが「旅程管理主任者」です。
似たような資格に「旅行業務取扱管理者」や「通訳案内士」(正式名称は全国通訳案内士)がありますが、これらの資格をもっていれば「旅程管理主任者」の資格の代替になることはあるのでしょうか。
今回は、混同しやすい3つの資格と職業について解説いたします。
最初に結論から出してしまいましょう。
通訳案内士の資格を持っていても、添乗員として働くことはできません。
添乗員になるためには旅程管理主任者の資格を取らなければならず、この資格に関しては、他の資格で代用することはできません。
通訳案内士資格、旅程管理主任者、そしてもうひとつのよく似た資格、旅行業務取扱管理者の3つの資格は、それぞれ必要とされる職業が全く異なるのです。
それでは、通訳案内士資格、旅程管理主任者、旅行業務取扱管理者の資格の違いと、それぞれの資格がどのような職業に必須、あるいは有効なのか見ていきましょう。
通訳案内士は、通訳案内士として働くのに必要な資格です。
通訳案内士の仕事は、日本を訪れた外国人観光客に対して、外国語を用いて日本の文化や歴史や生活などについて案内をしたり、観光地の案内をしたりする仕事です。
日本国内で外国人をもてなす観光ガイドという理解が良いでしょう。
ただ通訳ができるだけではなく、日本の歴史や地理、文化、生活習慣、自然などについて深い知識を持っていなければなりません。
通訳案内士の資格は国家資格で、国家試験を受けて合格しなければ通訳案内士を名乗ることはできません。
通訳することや、外国人を相手に観光ガイドをすることそのものは無資格でも可能ですし、無資格でも報酬を得て仕事とすることができます。しかし、通訳案内士の資格を持っていればフリーランスで働く際に信頼度が高まり受注しやすくなりますし、単価も上がります。
「通訳案内士」を名乗るためには必須の資格なのです。
旅程管理主任者は、添乗員になるために必要な資格です。
添乗員の仕事は、旅行客に同行して全面的に旅行のサポートをおこなう仕事です。
出発前の挨拶や確認の電話、海外旅行であれば出国や入国のサポート、ホテルチェックイン代行、観光地のチケット受け取り、タイムテーブル管理、旅行客の健康管理やトラブル対応など、その仕事は多岐に渡ります。
一般的に、添乗員は観光地の案内をしたり歴史的背景などの解説をしたりする、いわゆるガイドの仕事は基本的には行いません。
そのため、多くの団体ツアーでは添乗員と観光ガイドが同行することになります。
しかし、人数の少ないツアーや、不測の事態で観光ガイド不在の状況となってしまった時などは、添乗員がガイドの役割を務めることがあります。
日本の添乗員であれば、日本人の旅行客を相手に仕事をするため、使う言葉は基本的に日本語です。海外旅行に添乗する場合は、英語を使うことも多いですが、メインの言語は日本語となります。
添乗員になるために必要な旅程管理主任者の資格は国家資格ではありませんが、国家資格に準ずる公的な資格で、添乗員になるためには必須となります。
旅程管理主任者の資格は、研修を受けないと取得できないため、添乗員派遣会社や旅行会社に登録して、研修や試験を受けて取得する流れとなります。
旅行業務取扱管理者は、通訳案内士と旅程管理主任者とは少し異なる資格です。
旅行業を事業として扱う会社では、営業所に必ず1人は旅行業務取扱管理者を置かなければならない決まりとなっています。そして旅行業務取扱管理者は、旅行業法で定められた旅行に関する様々な取り決めを遵守して監督するという役を担います。
旅行会社で働くだけならば、この資格は不要です。無資格でも旅行業界で働くことができます。しかし、旅行業界でキャリアアップ、ステップアップしたいという場合には、旅行業務取扱管理者の資格取得は避けて通れないと言っても過言ではありません。
営業所に1人は置かなければならないということは、店長やチーフ、マネージャーなど、肩書を持つ人物がこの資格を持っていることになります。
つまり、昇進、昇給を狙うには旅行業務取扱管理者の資格を取ることが必要なのです。
旅行業務取扱管理者は国家資格で、日本国内旅行を扱える国内旅行業務取扱管理者と、国内旅行も海外旅行も扱える総合旅行業務取扱管理者の2種類があります。
3つの資格が、それぞれ全く異なる仕事のために必要なものであることを解説いたしました。
しかし、これらの資格は相関性が全くないというわけではないのです。
具体的には、旅行業務取扱管理者の有資格者は、通訳案内士の「地理」という科目が免除になります。
添乗員として働くために必要な資格は旅程管理主任者でしたが、通訳案内士や旅行業務取扱管理者の資格を持っていれば、仕事をする上でかなりの強みとなります。
通訳案内士の資格では、高い語学力と旅行ガイドとしてのスキルを証明することができます。
海外旅行に添乗するために必要な総合旅程管理主任者の試験には英語の科目がありますが、それだけでは「高い語学力」を証明するのが難しく、通訳案内士の資格を取ることで、より確固たる語学力の証明となるのです。
また、前述の通り、添乗員がガイドの役を担うシーンも想定されるため、観光ガイドとしての基本的な知識を有していることも、添乗員として働く上でかなりの強みとなります。
旅行業務取扱管理者の資格を持っていれば、旅行業法やパッケージツアーの組み方などに精通しているという証明となるため、これもまた旅行業界で働く上での大きな強みとなります。
また、旅行業務取扱管理者の資格を持っていれば、自分でツアーを作ることも可能です。
自分でツアーを組んで、そのツアーに同行し、旅行客を案内するということもできるようになります。
このように、必要な仕事は全く異なる3つの資格でも、旅行業界で働く上では全ての資格が有効となります。
旅行業界で混同しやすい3つの資格と仕事について解説いたしました。
仕事をする上で必要な資格は必ず取得しなければなりませんが、それ以外の資格でも取得すればそれだけ強みが増えます。
添乗員を目指すならば、旅程管理主任者の資格取得は必須ですが、通訳案内士や旅行業務取扱管理者の資格も非常に有効となります。
ただ、それぞれの資格は互いに代替できるものではありません。
通訳案内士資格を持っていても、旅程管理主任者資格を持っていなければ添乗員にはなれません。資格に関する最新の情報を確認し、必要な資格を間違えずに取得しましょう。