海外旅行の添乗員(ツアーコンダクター)は英語が話せないとなれないようなイメージがあります。添乗員に求められる英語力はどの程度のものか、英語が話せなくても添乗員にはなれるのか、他の言語が話せると有利になるのか、など、語学力と添乗員の関係について解説いたします。
国内専門の添乗員を目指すのであれば、英語力は不要です。ただ、派遣の添乗員の場合、国内添乗の時給よりも海外添乗の時給の方が高いという事もあり、海外添乗もできる添乗員を目指す人も少なくないでしょう。
海外旅行の添乗員には英語力は必須能力です。目安として、英検2級以上、TOEICのスコアだと550点以上は欲しいと言われています。それほど高いレベルを求められるわけではなく、中級程度の実力があれば問題なくクリアとなります。
高度な英語が必要となる会議に参加したり、プレゼンを行ったり、ネイティブの人々と対等にディベートしたりする必要がなく、旅行先での基本的な会話と、トラブル時の対応力があれば十分なため、この程度のレベル以上あれば好ましいとされています。
また、観光英語検定という観光に特化した英語検定もあります。
英検2級、TOEIC550点という基準はあくまでも目安であって、点数だけ取っていても、実践の場面でコミュニケーションツールとして使えなければ意味がありません。
逆に、多少点数が足りていなくても、ボディランゲージや、知っている単語の組み合わせなどで積極的にコミュニケーションを取る事ができ、こちら側の意思や主張を伝えられれば、添乗員として十分通用する英語能力があると言えるでしょう。
また、大切になってくるのがヒアリング力です。いくら語彙力があっても、正しい文法を知っていても、相手が何を言っているか分からなければ添乗員は務まりません。特に、英語圏の国ではない国で英語でやりとりをする際には独特の訛りがある事も多く、聞き取りづらい英語の発音から、相手の言う事を正確に聞き取る力が必要となります。
海外旅行の添乗では、具体的にどのようなシーンで英語が必要になるのでしょうか。お客様とのコミュニケーションは基本的に日本語になるため、英語を使うシーンは現地の人々とやりとりをするシーンとなります。
JALやANAなど、日本の航空会社の飛行機を利用する場合は日本人クルーが乗り込んでいるため、問題無いですが、海外の航空会社の飛行機を利用する場合は日本人クルーがいないケースもあります。こんな時に、キャビンアテンダントなどのクルーと会話するのに英語が必要となります。ドリンクの注文や食事の選択、お客様から質問が出た際に代わりにクルーに聞いたり、説明したりするなどのシーンがあります。
渡航先の空港、トランジットで利用する空港では、英語で諸手続きを行うため、窓口で使う英語が必要となります。また、ロストバゲージなどの問題が起こった時に、空港のスタッフとやりとりをする際も英語が必要となります。特にこういったトラブル時にはこちらの主張や状況説明を正確におこなう必要がありますので、高い英語力が求められます。
空港からホテルへ移動する際に、ガイドではなくアシスタントが来る事が多いですが、このアシスタントは現地の旅行会社から派遣された人で日本語ができない場合が結構あります。現地在住の日本人というケースもありますし、そのままガイドも務めてくれる日本語ペラペラの現地の人というケースもありますが、日本語ができないアシスタントだった場合には英語でコミュニケーションを取らなければなりません。また、バスドライバーとのコミュニケーションで、英語は必須です。
ホテルのチェックイン、チェックアウトの各手続、鍵の使い方、朝食の時間や場所の確認、Wi-Fiなどの環境と利用方法の確認、ルールなど、ホテルのフロントでは様々な事を英語で会話してお客様にお伝えしなければなりません。海外のホテルでは、お湯が出ない、テレビがつかない、電気がつかない、などの小さなトラブルが起こる事が多いため、お客様から連絡があった時に代理でホテルのフロントに問い合わせる事もあります。
海外旅行の食事は、もともと決まったレストランにお客様をお連れして決まったメニューをお出しする際も、ドリンクは自由注文になります。添乗員はまず店員にドリンクの種類と値段を聞き、お客様にお伝えします。そしてお客様からオーダーを取り、店員に伝えます。最後に清算の案内もします。これらのやり取りをするのは添乗員の役目です。トイレはどこにあるか、有料なのか無料なのか等の確認も大事な仕事のひとつです。
その他、海外ではどんなトラブルが起こるか分かりません。すりやひったくりにあったお客様と警察に行ったり、体調を崩したお客様を病院へお連れしたり、イレギュラーなシーンで英語を使う事も少なくありません。こういったトラブル時にスムーズに対応できるよう、前もって使いそうな単語や言い回しは頭に入れておく必要があります。
海外添乗員は外国語力がとても重要です。実務でプラスアルファになる事は間違いありませんので、英語以外の語学が堪能で添乗員を目指したいという方は、英語能力に磨きをかけて、胸を張って「英語と〇語ができます」と言えるようになりましょう。